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QRコンテンツで広がるUnit導入 ― 生徒主体の英語活動を生み出すアイデア ―

QRコンテンツで広がるUnit導入 ― 生徒主体の英語活動を生み出すアイデア ―

授業実践・研究

 2026/10/14

  • # Book 2 Unit 1

  • # ICT活用

  • # 単元導入

  • 大阪教育大学 准教授

    小林 翔

教科書のQRコンテンツを「活動」へつなげる

NEW HORIZONには、本文音声、単語の発音、アニメーション、スピーキング練習動画など、生徒の学習を支える多様なQRコンテンツが収録されています。しかし、QRコンテンツは「一度視聴して終わり」になってしまうことも少なくありません。これらのコンテンツを、授業のねらいに合わせて少し工夫し、生徒が英語を聞き、話し、表現する活動へと広げることができます。

   例:NEW HORIZON Book 2 Unit 1(p.9)

今回紹介するQRコンテンツを「英語を使うための教材」として使う「アニメ声優チャレンジ」の活動は、どのUnitでもすぐに取り入れることができます。教科書に収録されているUnitの扉ページのアニメーションを活用するだけでスピーキング(やり取り)の実践ができ、Unit導入の時間を生徒主体のスピーキング活動へと自然に広げることができます。

この活動には、生徒だけでなく先生方にとっても次のようなメリットがあります。

[生徒にとってのメリット]
  • Unitの内容への興味・関心を高められる

  • 英語の音声や表現を繰り返し練習できる(「くり返し」ボタンをチェック)

  • 友達と協力しながら、自信をもって英語を話す(やり取りする)機会になる

[教師にとってのメリット]
  • 既存の教科書コンテンツを活用するため、新たな教材準備の負担を増やさずに実施できる

  • 家庭学習と授業をつなげ、生徒が準備した成果を授業で発表する場を設定できる

  • Unit導入を、生徒が自然に英語を使う活動へ発展させることができる

特別な教材や準備は必要ありません。教科書にあるQRコンテンツの使い方を少し変えるだけで、生徒が目的・場面・状況を踏まえ、英語を繰り返し聞き、話したくなる学習環境をつくることができます。

実践例 : Unit の世界へ飛び込む「声優チャレンジ」

1.前のUnitの授業の最後に次回の予告をする

新しいUnitに入る前の授業の終わりの5-10分間ほど前に、「次のUnitではアニメ声優チャレンジを行う」と予告し、学習への期待感を高め、練習の時間を少しだけ取ります。

「次回から新しいUnitに入ります。最初の授業では、UnitのアニメーションPreviewアニメ(字幕OFF)を使って『アニメ声優チャレンジ』を行います。どのペアや、グループが発表するかは当日発表します。QRコードからアニメーションを見て、ペアやグループで練習してきてください。最初はPreviewアニメ(字幕ON)で文字でも内容を確認し、その後、Previewアニメ(字幕OFF)をクリックしアニメーションに合わせて英語表現を練習しましょう。」

ペアやグループは、そのUnitのアニメーションに登場する人物の数に合わせて編成すると、役割分担がしやすくなります。必要に応じて、担当するキャラクターを決めて練習させたり、当日はどの役になっても対応できるように全員が練習したりするなど、クラスの実態や英語力に合わせて工夫できます。

また、発表するグループを当日まで知らせないことで、生徒は適度な緊張感をもちながら準備するようになります。また、5-10分間だけではロールプレイングを完璧に行うのは難しいので、家庭でもアニメーションを何度も視聴し、登場人物の話し方や感情表現を意識しながら練習するきっかけにもなります。

例えば、Unitの扉ページのアニメーション(例:NEW HORIZON Book 2 Unit 1 p.9)では、ペアでの約1分間のやり取りが収録されています。アニメーションの登場人物の理子は8回、エディは6回ものせりふがあり、互いに何度も会話のキャッチボールが行われています。最初から完璧なロールプレイングを求めるのではなく、会話の途中でせりふが飛んでしまったとしても、即興で考え、やり取りを何とか継続しようとする姿勢を育てたいと思います。

QRコンテンツを事前学習として位置づけ、活用することで、授業外での学びがUnit導入の活動につながり、生徒はより自信をもって英語で表現することができます。

2.家庭で動画を見ながらアテレコ練習 : 受動的な段階から発信的な段階へ

生徒はQRコードからPreviewアニメ(字幕ON)をクリックし、場面設定や内容を理解しようと繰り返し視聴します。次に、視聴するという受動的な段階から、登場人物の話し方(話すスピードや抑揚、ポーズの置き方)、ジェスチャーや表情等の感情表現を意識しながらスピーキングの真似をする(アテレコを練習する)という発信的な段階に移行します。

「もっと自然に話したい」「友達とタイミングを合わせたい」という気持ちが生まれると、動画を繰り返し再生し、自分たちのセリフや話すタイミングを調整するようになります。この活動では、相手により良く伝わるように話すことを意識しながら英語を練習します。このデジタルコンテンツを活用することで、教師がその場にいなくても授業外でも、生徒は自分たちのペースで反復練習できるため、自信の獲得にもつながります。

3.Unit 最初の授業で発表!

授業では、まずクラス全員でアニメーションを視聴します。その後、発表するグループを発表します。どのグループが選ばれるかわからないため、生徒は「自分たちも発表するかもしれない!」という意識と緊張感をもって準備しています。教師の合図で、音声を消して、動画に合わせてアテレコを開始します。

授業の流れ(例)

Teacher:   Welcome to the Anime Voice Acting Challenge!

Class:   We’re ready!

Teacher:  Today’s first performers are Group 2.

Class:  (Applause)

Teacher:  Voice actors, are you ready?

Group 2:  Yes!

Teacher:  Ready?  Three, two, one ....  Action!

(After the performance)

Teacher:  Fantastic!  Let’s give Group 2 a big round of applause!

Class :  (Applause)

※クラスの人数や進度に合わせて、いくつかのペアやグループに発表させます。

4.授賞式で互いのよさを認め合う

発表後は、クラス全員でそれぞれのグループのよかった点を振り返りながら投票を行います。タブレット端末のアンケートフォームを活用すると、集計も簡単です。

  • Best Voice Actor Award(ベスト声優賞)

  • Best Emotional Performance Award(ベスト感情表現賞)

  • Best Pair/Teamwork Award(ベストペア・チームワーク賞)

  • Audience Choice Award(オーディエンス賞)

  • Creative Arrangement Award(アレンジ賞)

など、さまざまな賞を設定することで、一人ひとりの努力やグループのよさを認め合うことができます。

授賞式(投票時間)を取り入れることで、教室はまるでアニメのアフレコ発表会のような雰囲気になります。生徒は「次はもっと上手に演じたい」という意欲をもち、その後の本文音読やスピーキング活動にも前向きに取り組むきっかけになります。

QRコンテンツだから広がる学び

この活動の目的は、「伝えるためのことば」として主体的に使うことです。登場人物になりきって演じることで、生徒はイントネーションやリズム、感情表現を意識しながら英語を繰り返し練習します。また、「この人物はどんな気持ちなのだろう」「この後どのような展開になるのだろう」と考えることで、本文を読む前からUnitの内容への興味や学習への期待感も高まります。

実際の授業では、次のような生徒の姿が期待できます。

  • 「もう一度動画を見て、話すタイミングを合わせたい」

  • 「登場人物の気持ちを考えて、もっと自然に言いたい」

  • 「友達と協力して、よい発表にしたい」

このように、生徒自身がよりよい表現を目指して、主体的に練習や工夫に取り組む姿につながります。

デジタルコンテンツは、「いつでも」「どこでも」「何度でも」利用できることが大きな特長です。アニメーションを家庭でも何度も視聴できるため、生徒は自分のペースで練習を重ね、自信をもって授業に臨むことができます。教科書のコンテンツを「視聴する教材」として活用するだけでなく、「英語を聞き、話し、表現する活動」へとつなげることで、授業と家庭学習をつなぐ学びが生まれます。

また、この活動は特別な教材を準備する必要がなく、教科書に収録されたQRコンテンツを活用して実施できます。教師にとっても、生徒が家庭で反復練習した成果を授業で発表する場を設定しやすく、Unit導入の時間を、生徒が英語に主体的に関わる活動へと発展させることができます。

QRコンテンツを生かした授業づくりへ

QRコンテンツは、授業のねらいに合わせて活用方法を少し工夫するだけで、生徒が英語を継続的に聞き、話し、表現する機会を広げることができる、学びを支える心強いツールになります。特に、アニメーションでは、音声だけでなく、映像や文字、登場人物の表情や動きなど、複数の情報を手がかりに学ぶことができます。

こうしたマルチモーダルな学習環境は、生徒の理解や表現を支える足場(scaffolding)として機能し(Mayer, 2024)、未知の単語の意味を推測する重要な手がかりにもなります(Hannibal Jensen, 2019)。また、生徒は言葉だけでなく、場面や感情を理解しながら英語を使うことができるため、間違いを恐れる気持ちが和らぎ、安心して表現に挑戦しやすくなります(Klimanova, 2021)。

今回ご紹介した「アニメ声優チャレンジ」のように、「もっと上手に演じたい」「友達と息を合わせたい」「発表で認められたい」という気持ちを引き出す活動は、生徒が主体的に英語に触れ、学ぶきっかけになります(Wang & Devitt, 2022)。

教科書には、生徒の学びを広げる多様なコンテンツが用意されています。それらを「視聴する教材」として終わらせるのではなく、「英語を聞き、話し、伝える活動」へとつなげることで、授業と家庭学習が自然につながり、生徒が英語を使う機会をさらに増やすことができます。

授業をより豊かに活用する一つの方法として、QRコンテンツを授業に取り入れてみませんか。まずはUnit導入の5分から。「アニメ声優チャレンジ」が、生徒一人ひとりにとって英語を「伝える」「表現する」楽しさを実感できるきっかけになるかもしれません。

参考文献

Hannibal Jensen, S. (2019). Language learning in the wild: A young user perspective. Language Learning & Technology, 23(1), 72–86. https://doi.org/10.64152/10125/44673

Klimanova, L. (2021). The evolution of identity research in CALL: From scripted chatrooms to engaged construction of the digital self. Language Learning & Technology, 25(3), 186–204. https://doi.org/10.64152/10125/73455

Mayer, R. E. (2024). The past, present, and future of the cognitive theory of multimedia learning. Educational Psychology Review, 36, Article 8. https://doi.org/10.1007/s10648-023-09842-1

Wang, M., & Devitt, A. (2026). A systematic review of computer-mediated communications in Chinese as a foreign language from 2008 to 2022: Research contexts, theoretical foundations and methodology, affordances and limitations. Language Teaching Research, 30(1), 36–64. https://doi.org/10.1177/13621688221132475